【抗議声明】
「祖国のために命を捨てる、捧げる」発言に対し断固抗議する
名古屋市長の河村たかし氏は、4月22日の定例記者会見で、市が制定する「なごや平和の日」をめぐっての発言の中で、「祖国のために命を捨てるのは相当高度な道徳的行為だ。まちがいない」と述べました。そして、このことを「学校でも子どもたちに考えさせることが必要だ」また、記者とのやり取りの中で「国に対して自分の命を捧げるということは大変な勇気のあること」などと発言しています。
日本国憲法はその前文で、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を祉から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と述べています。
また、第13条では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」、第23条では「学問の自由は、これを保障する。」、第31条では「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑則を科せられない。」そして、99条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この第法を尊重し擁護する義務を負ふ。」としています。
こうした点に照らせば、河村氏の発言は為政者として大いに逸脱していると言わざるを得ません。市民の命と暮らしを守る立場の市長は、市民や子どもたちに「命を捨てさせ、捧げさせる」のではなく、戦争が起こらないように、戦争を起こさせないように努めなければなりません。
旧法から後退したとはいえ、教育基本法第1条は「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」と述べています。私たち教職員は、子どもたちに「いのちの尊さ」を考えさせ、「生きる希望」をもって学校生活を送らせたいと考えます。そして、子どもたちには「戦争で死ぬ」ことを考えさせるのではなく、「戦争のない世界にするにはどうしたらいいか」をこそ考えさせたいと思います。
また、教育基本法第16条には「教育は、不当な支配に服することなく・・・」との文言もあります。河村氏の発言は、教育に対する不当な介人・支配に他なりません。
私たち教職員は、河村氏のこの発言に断固抗議します。
2024年4月 愛知県教職員労働組合協議会