全国学力テストは大学入試共通テストより問題点が多い

全国学力テストは大学入試共通テストより問題点が多い

~子どもたちは実験台にされた?

                                    【学習資料】   2020.2.

                                    愛教労「学力テスト」対策担当

 

当事者である高校生が声を上げたことで、大学入試共通テストの2本柱である「英語試験の民間丸投げ」と、「国語・数学への記述式問題の導入」が見送られることになりました。このことから、全国学力テストの問題点が改めて明らかとなりました。

 

1 全国学力テストと同じ作成方針の共通テストの記述式問題

共通テストの試行調査では、国語と数学の記述式問題が出されました。そのうち数学については、極端に正答率が低いため、すでに中止となっていました。

今回延期となった国語の記述式問題は、次のような特徴を持っています。

ア 長文の複数の資料(実用文)を読む。

イ 資料のうちの一つである「会話文」をもとに設問がいくつか出される。

ウ 自分の考えではなく、指定された人物の考えをまとめる。

オ 必要な情報を資料から見つける。

カ 字数など4つの条件に合うように記述する。

キ これを短時間に行う。 

このように、全国学力テストと全く同じ作成方針であったと考えられます。

 

2 「教育に悪影響を及ぼす」

 紅野謙介さん(日本大学教授)をはじめとした国語教育研究者たちが、126日に出した「共通テスト『国語』における記述問題の導入中止を求める緊急声明」では、記述式問題が「教育に悪影響を及ぼす」と分析して、次のように述べています。

 

「国語教育に関わり、入学試験にも携わってきた私たちは、もとよりマークシート式の問題に限界があり、記述式にはマークシート式にない柔軟性や、思考力・表現力を問う可能性があることは理解しています。しかし、現行案のまま導入することに対しては、断固として反対します。制度的な不備とともに、記述問題の長所を損なう悪しきモデルを掲げることで、若い世代の自由な発想力や思考力、表現力をむしろ規制してしまうと考えるからです。」

「採点の揺らぎを減らそうとすれば、問題作成に制約を加えることになります。結果的にいくつもの条件をつけて解答を誘導することは、記述問題の長所を殺してしまいます。また、こうした試験問題をモデルにすることにより、思考や発想の定型化を推し進め、教育に悪影響を及ぼします。」

 

3  共通テストよりも問題が大きい全国学力テスト~子供たちは実験台とされた?~

最後に、全国学力テストの記述式問題の問題点についてまとめてみます。1・2で述べてきたことと重なる点もありますが、全国学力テストは共通テストよりさらに大きな問題点を持っていると考えられます。

 

 ア 全国学力テストの記述式問題は「活用力」を把握するためであると言われていますが、高度の情報処理能力を求める問題であると考えられます。

 イ 平成29年度の共通テスト試行調査、国語第1問、問い3の設問を読んでみると、「80字以上120字以内で書くこと」など4つの条件に合うように記述することが求められています。これは、全国学力テストの国語記述式問題と瓜二つです。さんざん、全国学力テストで子どもたちを使って実験をしてきて、これなら大学入試にも使えるということで、共通テストにも記述式問題を導入するということになったと考えられます。

 ウ 全国学力テストでは何度もベネッセが委託を受けて、採点業務を行ってきました。そこでノウハウを身につけたベネッセ(子会社)が、2024年度まで委託を受けることができたと考えられます。

 エ 共通テスト試行調査では、数学の記述式問題の正答率が34%と出たため、本番では中止となりました。ところが、全国学力テストでは、たとえ19%とか7%とか極端に低い結果が出ても、記述式の問題を中止とすることはありません。

 オ 共通テストでは、部分点があります。また、マークシート式とは別での評価がなされます。一方、全国学力テストでは部分点はなく、しかも選択式の問題と同じ配点(1点)という不公平極まりない評価がなされます。

 カ 全国学力テストでは、学力の把握をするということですが、評価基準がないため、点数の比較に目が行ってしまいます。せいぜいできるのは全国平均との比較ぐらいで、それよりも低いと課題があるとされ、「授業改善」が求められます。

 キ 結局、都道府県別・政令指定都市別の結果が公表されることで、競争に拍車がかかることになります。競争をあおり、事前対策を広げているのは文科省なのです。

 

以上のように、全国学力テストの記述式問題は、共通テストのそれよりもはるかに大きな問題点を抱えていると考えられます。

 

「私だけ成績が戻ってこなかった」~中学校英語「話すこと」調査

「私だけ成績が戻ってこなかった」~中学校英語「話すこと」調査による最大の被害者は生徒~  

【学習資料】

202027      愛教労「学力テスト」対策担当

 

 検証報告書では、「データ欠損等が集中して発生した学校」の検証結果が公表されています。ここから、全体的として該当生徒は1校あたり何人が多いかを推測してみました。

 公表された数値は「データ欠損等が集中して発生した学校」ですので、平均値が427名と高くなっています。中央値は11名です。「集中して発生した」学校を26校公表したにもかかわらず、1名~4名の学校が462%を占め、しかも1名が一番多いというように、人数が少ない学校数が多いということが分かります。

これに対して、全体では、平均値は92名で、推計中央値は24名となります。このことから、1名・2名の学校が半数を占める、そして1名が圧倒的に多いと推測されます。

学校の中で成績が返ってこなかった人数が少ないということは、それだけ該当生徒にとって「みんなは成績が戻ってきたのに、私だけ戻ってこなかった」という思いが強くなり、ショックが大きかったのではないでしょうか。英語調査については、教職員の多忙化や正確な学力把握できないことなどの問題点がありますが、最大の被害者は生徒であったと考えられます。

 

 検証報告書の公表値 26

  3507名中1111名の欠損

   全体   1658

       15298の欠損 

 平均値   427

 中央値  11

    平均値    92

  中央値(推計)24

内訳 1名・5校  累計5

   2名・2校      

   3名・3校          10

   4名・2校          12

   8名・1校          13

     (中央値 11名)

  14名・1校       14

  15名・1校           15

  33名・1校           16

     (平均値 427名)

  45名・1校       17

  50名・1校           18

  72名・1校           19

  82名・1校           20

 102名・1校           21

 103名・1校           22

 108名・1校           23

 133名・1校           24

 149名・1校           25

 170名・1校           26

内訳 1名

   2名

     (中央値・推計 24名)

      3名     

   ・・・

   9名

     (平均値 92名)

    10名      

  ・・・

 

中央値の推計の出し方

1)平均値の比較

   427÷920215

  全体は、公表値の15以下

2)中央値の推計

   11×02152365

  だから、24という推計値が出る。

 

 

 

 (2020.2.11追記)文科省学力調査室に、全体の人数別の学校数を教えてほしいと電話で問い合わせをしましたが、2度とも「これ以上は報告できない」と断られました。生徒への影響が余りにも大きかったため、公表したくないのではないかと考えられます。

 

学テ反対の立場から「県学力向上推進委員会」に申し入れ

                                      2020124

学力向上推進委員会 委員長様

          委 員様

 

全国学力・学習状況調査と学力問題に関する意見書

 

                              愛知県教職員労働組合協議会

                               議長  岩 澤 弘 之

 

 全国学力・学習状況調査(以下、「全国学力テスト」とします)に関わって、愛知県の教育についての論議を進めていただきありがとうございます。

 今回の意見書では、今年度の中学校英語調査を検討することを手がかりにして、全国学力テストの問題点を指摘するとともに、学校教育にとって何が必要なのかをまとめてみました。中身は、現場の子どもたちや教職員の願いを反映したものです。ぜひ、内容をよく吟味していただき、貴委員会での論議に生かしていただきたいと願っております。

 

 

 英語調査による最大の被害者は生徒

 今年度初めて実施された中学校英語調査、とくに「話すこと」調査では問題点が続出しました。パソコンが対応しないため実施できない学校があったり、準備や処理のために膨大な時間を費やしたり、苦労して実施したものの「解答の公平性」が担保されない結果となったりしました。いずれにしても、昨年度の予備調査で指摘されていたことばかりであり、本調査を実施してはならなかったのです。

英語調査の実施は、現場の混乱と多忙化を招いただけではありません。調査を受けた生徒に次のような影響を及ぼしたことが想像されます。

ア 「話すこと」調査では、音声データの欠損などにより、1,658校の15,298人に成績が提供されないという事態となりました。貴重な授業時間を使い、真剣に取り組んだのに、その結果が返ってこなかったのです。該当の生徒は、「私だけ成績が返ってこなかった」と、その心が傷つけられたのではないでしょうか。

イ 一方、「話すこと」調査の成績が返ってきた生徒にとってはどうだったのでしょうか。結果は、5問中の1問正解(100点満点に換算すると20点)が35%弱、0問(0点)は23%弱でした。この2つを合わせると、全体の半分以上が20点以下でした。しかも、4人に1人が0点だったのです。「話すこと」調査によって英語に対する苦手意識を強めることにつながったのではないでしょうか。

 ウ また、「話すこと」調査以外でも、きわめて難しい問題がありました。「聞くこと」調査では正答率が85%、「読むこと」調査では116%、「書くこと」調査ではわずか19%というように、正答率がきわめて低い問題がいくつかありました。このような正答率の極端に低い問題は、学力を把握するのに役立たないだけにとどまらず、生徒の英語に対する学習意欲を減退することにつながったのではないでしょうか。

以上のように、英語調査は、生徒の心を傷つけたり、その学習意欲を減退させたりする事態を招きました。英語調査による最大の被害者は生徒であったと考えられます。

 

 「楽しい授業」「分かる授業」を

では、小学5・6年で「外国語活動」、中学1・2年で「英語科」を学習してきた中学3年生の英語教育に関する意識はどうなっているのか、生徒質問紙の結果から見てみまししょう。

生徒の回答は、「英語は将来、社会に出たとき役に立つと思いますか」「大切だと思いますか」に対して、「そう思う」「どちらかというとそう思う」が、どちらとも85%を超えています。

 

「英語で学習したことは、将来、社会に出たときに役に立つと思いますか」

  そう思う(613%)  どちらかというとそう思う(244%)

  どちらかというとそう思わない(90%) そう思わない(51%)

 

「英語の勉強は大切だと思いますか」

  そう思う(595%) どちらかというとそう思う(261%)      

  どちらかというとそう思わない(91%) そう思わない(52%)

 

ところが、「英語の授業はよく分かりますか」に対して、「そうは思わない」「どちらかというとそうは思わない」が30%を超えています。「英語の勉強は好きですか」に対しては、「そうは思わない」「どちらかというとそうは思わない」が40%を超えています。ここからは、授業が分からず、その結果英語が好きになれないという実態が浮き彫りとなっています。

 

「英語の授業はよく分かりますか」

  そう思う(299%) どちらかというとそう思う(365%)      

  どちらかというとそう思わない(222%) そう思わない(113%)

 

「英語の勉強は好きですか」

  そう思う(292%) どちらかというとそう思う(271%)      

  どちらかというとそう思わない(240%) そう思わない(197%)

 

このような実態に対して、「児童生徒の『分かるようになりたい』『できるようになりたい』という思いに応えるため、・・・楽しい授業、分かる授業、できる授業づくりを目指したい。」(平成25年度全国学力・学習状況調査 学力・学習状況充実プラン、愛知県教育委員会義務教育課 平成262月)という提案が、今こそ求められているのではないでしょうか。

 「楽しい授業」「分かる授業」を実施するためには、まずは教職員の定数改善をして多忙化解消を図ったり、すべての学年で少人数学級を実現したりすることが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 

 改訂学習指導要領の抜本的見直しを

文部科学省は、学習指導要領を改訂し、英語教育の強化・早期化を進めようとしています。

小学校では、来年度から実施される改訂学習指導要領により、5・6年で英語が正式教科となります。600語から700語の英単語を習得しなければなりません。これ以外にも慣用句や過去形の文など非常に難しい内容まで扱います。教員はとても週2時間の授業で教えきることはできないと考えられます。教員からはすでに「英語に関心を持たない児童が増えた」「英語嫌いが増えた」という声が聞かれています。

再来年度から本格実施される中学校ではどうでしょうか。現行は、1200語の英単語を学習しています。それが、改訂学習指導要領では、1600語から1800語を学習することになります。高校で学習している現在完了進行形や仮定法も入ってきます。また、高校と同じように授業は英語で行うことを基本とする、とされています。英語科教員からは、「現行学習指導要領で学習内容が増え、『できる子』と『できない子』の格差が大きくなった。前の学習指導要領の学習内容にしてほしい。」「改訂学習指導要領が実施されると授業が成立しなくなる」という声が聞かれます

改訂学習指導要領を抜本的に見直すことが必要であると考えますが、いかがでしょうか。

以上

 

【学習資料】 中学校英語調査は中止に           

中学校英語調査は中止に           【学習資料】

~事前練習をさせた上に2日間にわたって調査を行う?~  201911.1

 

                        愛教労全国学力テスト対策担当

 

今年度はじめて実施された全国学力テストの中学校英語調査ではトラブルが続出しました。文科省は、920日に、中学校英語「話すこと」調査についての検証報告書を公表しました。報告書からは、現場に多大な負担を与えたこと、調査では学力が把握できないことが改めて浮き彫りになりました。それにもかかわらず、文科省は、今回よりさらに負担を増大させた上で次回以降も英語調査を行うとしています。

 

1 校長会から多数の問題点の指摘や反対の意見

今回の検証にあたって、文科省は、全日本中学校長会から意見・要望を集約しています。そこからは、「話すこと」調査についての多数の問題点の指摘や反対の意見が寄せられていることが分かります。以下、そのうちのいくつかを紹介します。

 

・ 今回の調査を利用して、英語力や指導力の向上をうたうような改革が出て、現場の教師の多忙化に拍車がかかることが心配。

・ 現在の学校現場の環境設備では(PC教室がオープンなつくりになっている学校が多い)、「話すこと」に関する生徒の力を確実に把握することは難しい。

・ 生徒が普段使用しないヘッドセットの使用など、本来測定しようとしている「話すこと」以外の要素の干渉が大きいのではないか。

・ 対面式での活動はしているが、PCに向かって話す活動を授業で行っていなかったので、今回の調査では生徒が困惑している状況が見られた。

・ 隣の生徒の声が大きく、ヘッドセットから問題が聞こえないと訴える生徒がいた。

・ 特別な配慮を要する生徒の調査のあり方については検討の余地がある。

・ 調査当日は、午前に4学級、午後に3学級実施した。給食と昼休みをはさんだために問題漏洩の可能性は否定できない。

・ プログラム展開がうまくいかず、使用できたパソコンに限りがあり、1学級を1度に調査できず、6時間目終了時間を越えての実施となった。

・ 「話すこと」調査も含めて1日で終了させるスケジュールは厳しい・・・。

・ 4月は人事異動などの関係で教職員は多忙・・・。

・ 4月の調査前準備は、5名(教務主任、英語科教師、ICT支援員)で40台のPCの動作確認を行ったが、これだけで2時間近く要した。前日のプログラムのロック解除も2時間程度、調査後の音声データ回収も2時間程度の時間を要した。

・ 音声データの回収が勤務時間後となり、業者が時間外のため連絡がつかなかった。

・ サーバー経由ではうまく音声データが回収できず、全PCから音声データをUSBで回収することとなりかなりの時間を費やした。

・ 調査前日は教育委員会への連絡が集中し、どの学校も焦りがあったように思われる。

・ コールセンターがつながりにくい状況であった。

・ 今回の実施形態では、委託業者の介入・支援が必須であると感じられた。

 

2 「私だけ成績が返ってこなかった」

検証報告書によると、重大なトラブルのうちの一つ、USBのデータの欠損については、該当学校の全生徒が該当する場合から1名のみの場合まで多岐にわたりました。その結果、1名・2名・3名といった少数の割合が高くなりました。人数が多ければ良いというわけではありませんが、人数が少なければ少ないほど該当の生徒の心に与える影響は大きくなります。周りのみんなは成績をもらっているのに、「私だけ成績が返ってこなかった」と心に大きな傷をつけられたことでしょう。

 

3 事前対策を公認?

検証報告書では、パソコンとヘッドセットを使っての調査は初めて実施されたため、生徒にも担当教師にも不安があったと「反省」しています。それで、「少なくとも調査対象となる生徒全員が調査方法を事前に体験できる機会の設定が必要である」とされています。何のことはない、事前練習をさせよということです。文科省が事前対策を公認していては、「序列化や過度の競争が生じないようにする」(実施要領)に反する事態が深刻化するばかりです。

 

4 2日間にわたって調査実施?

「解答の公平性」を保ことができない、つまり、生徒間の座席が近いため、解答する声が聞こえてしまうという根本的な問題について、調査報告書では、次のような提案をしています。「1回当たりの調査人数を削減し生徒間の間隔を確保する」、「今回は全ての調査を1日で実施していたが、これを2日間に分けて実施する」という提言です。

今回の調査でも、新学年早々の忙しい時期に行って現場を混乱に陥らせたのに、事前に練習させた上で調査を2日間にわたって行っていたりしたら、学校教育に重大な支障を来します。英語調査は中止しかありません。

ダウンロード → 
中学校英語調査は中止に

 

愛知県教委に「全国学力・学習状況調査と学力問題に関する意見書」提出

全国学力学習状況調査と学力問題に関する意見書はダウンロードできます。 ダウンロード → 2019 学力意見書

 

201910月吉日

学力向上推進委員会 委員長様

          委 員様

 

全国学力・学習状況調査と学力問題に関する意見書

 

愛知県教職員労働組合協議会

  議長  岩 澤 弘 之

 

 全国学力・学習状況調査(以下、「全国学力テスト」とします)に関わって、愛知県の教育についての論議を進めていただきありがとうございます。

 毎年、私たちの組合では、4月のテスト当日の子どもや担任の感想を聞き取ってきました。また、テスト問題や調査報告書などを分析してきました。その結果、全国学力テストが子どもたちを苦しめ、競争をあおり、学校教育をゆがめるものであることが明らかとなりました。私たちの組合では、全国学力テストの中止を求めて取り組みを進めているところです。

 この意見書では、今年度の小学校国語を検討することを手がかりにして、全国学力テストの問題点を指摘するとともに、学校教育にとって何が必要なのかをまとめてみました。中身は、現場の子どもたちや教職員の願いを反映したものです。ぜひ、内容をよく吟味していただき、貴委員会での論議に生かしていただきたいと願っております。

 

 

 小学校国語の成績が悪い?

 今年度の愛知県の小学校国語の成績について、「全国最下位だった」「全国平均より48%も低い」というような報道がなされました。果たして、愛知県の小学校国語の成績が悪いと評価してしまって良いのでしょうか。

そもそも、全国学力テストで把握できるのは、「学力の特定の一部分」(実施要領)に過ぎません。小学校国語の調査は、50分間行われただけであり、問題数にいたってはたったの14問にすぎません。きわめて限定された問題についての調査結果、それも平均正答率によって、愛知県の成績が悪いと結論づけることはできないと考えられます。

 

 学力が把握できるの?

文科省は、「学力の特定の一部分」が把握できると言いますが、本当に学力が把握できるのでしょうか。

たとえば、今年度の国語調査問題の1番を取り上げて考えてみましょう。設問の1と2では、選択肢の中から当てはまるものを選ぶだけで、「書く能力」があるかどうかが把握できるとされています。「書く」という活動はせずに、読んで該当するものを選択するだけで可能だと言うのです。この設問は、「書く」という学力を把握するには不適切な問題です。

また、選択式の設問ですので、全く分からなくても、当てずっぽうに選んでまぐれで「正答」となる場合があります。その場合でも、「書く能力」があると評価されます。選択式の設問は、学力を把握するには不適切です。

さらに、配点の不公平さもあります。選択式の易しい問題でも、設問3のような記述式の難しい問題でも、配点は同じで1点です。

ここでは、問題の1番の設問3つを取り上げただけですが、国語問題全体を通して、問題内容・形式が不適切な上に、配点も不公平となっています。これではとうてい学力を把握することはできません。

なお、学力を把握することのできない調査であるにもかかわらず、文科省が成績を公表すると、あたかも正確に学力を把握した数値とみなされてしまいます。

 

 全国平均との比較で課題が把握できる?

次に、全国の平均正答率について考えてみます。全国の平均正答率は、果たして評価基準になるのでしょうか。

全国学力テストを巡っては、全国的に「全国最下位を抜け出せ」「全国平均を上回れ」「全国トップレベルを維持しろ」と競争が広がっています。その結果、「4月前後になると、例えば、調査実施前に授業時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させ、本来実施すべき学習が十分にできない」(文科省通知 平成28428日)というようなテスト対策が行われているところが増えています。テスト対策をすればするほど点数が上がります。そして、テスト対策をするところが増えれば増えるほど、全国の平均正答率も上がります。

全国平均正答率は、学力を正確に把握した平均値ではなく、テスト対策をした結果が反映した不正確な数値なのです。全国の平均正答率は、評価基準になりません。

Ⅰと合わせますと、学力を把握できない調査結果をもとに、全国の平均正答率と比較するという方法では、課題を見つけることはできません。むしろ、全国の平均正答率と比較して高いとか低いとかを気にすることで、全国的な競争に巻き込まれてしまう恐れすらあります。

 

Ⅳ 「楽しい授業」「分かる授業」を

 「授業改善を進めることが大切である」と言われることがあります。全国学力テストの結果をもとにした「授業改善」では、ともすると、「活用」を重視した授業、「上位層を伸ばす」授業となりがちです。これでは、一部の子どもだけが活躍する授業となり、授業が分からない子どもを増やすだけの結果となります。

 子どもたちはだれもが、「勉強が分かるようになりたい」「勉強が好きになりたい」と思っています。それに対して、「児童生徒が『教科の勉強は大切』『授業の内容はよく分かる』と回答しているが、それに比べ『勉強は好き』と回答する児童生徒は少ない状況が依然として続いている。・・・児童生徒の『分かるようになりたい』『できるようになりたい』という思いに応えるため、・・・楽しい授業、分かる授業、できる授業づくりを目指したい。」(平成25年度全国学力・学習状況調査 学力・学習状況充実プラン、愛知県教育委員会義務教育課 平成262月)という提案が、今こそ求められているのではないでしょうか。

 教員の多忙化解消を図り、すべての学年で少人数学級を実現して、「楽しい授業」「分かる授業」を実施することが求められていると考えますが、いかがでしょうか。

以上

 

全国学力テストでなぜ事前対策が広がるのか?

   全国学力テストでなぜ事前対策が広がるのか?

    ー英語調査のテスト問題から考えるー    【学習資料】 2019104

                                                   愛教労学力テスト対策担当

 

1 なぜ事前対策が広がる?

 ア 文科省が都道府県別・政令指定都市別の結果を公表するため、競争が激化する。

 イ 文科省の結果公表を受け、自治体段階で、「最下位を抜け出せ」「全国平均を上回
  れ」「全国トップレベルを維持しろ」と各学校へ圧力がかけられる。

 ウ テスト問題の傾向が分析されて、点数アップのための対策が立てられる。

   ex.過去において点数が低かった問題と全く同じ問題や似通った問題が出される。
  問題や設問形式などの傾向が変わらない。慣れておかないと時間内に解くことが
  できない。

 

2 英語調査ー予備調査と本年度調査とは瓜二つ

 英語調査については、テスト内容について驚くべきことが明らかとなりました。
それは、予備調査と本年度調査の内容・形式とも瓜二つであることです。
これでは、文科省が事前対策を奨励しているようなものです。

 

 

   2018年度 英語予備調査

     2019年度 英語調査

聞くこと

1(1)~(44つの絵から1つ選択

2 3つの絵を順に並べる

3 4つの選択肢から1つ選択

4 考えを1文以上で簡潔に書く

1(1)~(44つの絵から1つ選択

2 3つの絵を順に並べる

3 4つの選択肢から1つ選択

4 考えを簡潔に書く

読むこと

 

 

 

 

5(1)4つの選択肢から1つ選択

  2)4つの絵から1つ選択

 (3)5つの選択肢からすべて選ぶ

6 長文を読み、4つの選択肢から1つ 選択

7 長文を読み、4つの選択肢から1つ 選択

8 考えと理由を書く

5(1)4つの選択肢から1つ選択

  2)4つの絵から1つ選択

 (3)4つの選択肢1つ選択

6 長文を読み、4つの選択肢から1つ

 選択

7 長文を読み、4つの選択肢から1つ

 選択

8 考えを簡潔に書く

書くこと

 

9(1)①② 接続詞

 (2)①② 基本文型

 (3)①~③ 基本文型

10 勧めたいものを1つ決め、理由とともに30語以上で書く 

9(1)①② 接続詞

 (2)①② 基本文型

 (3)①~③ 基本文型

10 どちらかを選び、2つに触れながら、 考えを理由とともに25語以上で書く

話すこと

 

 

 

 

 

 

1(1What time is it?

   (2) How many children are there?

   (3) What is this woman doing?

   (それぞれの解答時間10秒)

2 2人の会話後、尋ねられたことに応 じる (解答時間20秒)

3 学校の紹介をする。(例、学校の所 在地や地域、部活動、学級数、先生や 生徒について)

  (考える時間1分、解答時間30秒)

 1When is her birthday?

  2What are they doing?

  3How does he come to school?

   (それぞれの解答時間6秒)

2 2人の会話が続くように応じる

   (解答時間20秒)

3 将来の夢、または将来やってみたい ことと、その実現のために頑張ってい ること、やるべきことについて話す

  (考える時間1分、解答時間30秒)

 

 

2019年 全国学習学力状況調査に反対する新たな取り組み

愛教労全国学力テスト反対の取り組み
・県教委への全国学力・学習状況調査に関する要請書
    ダウンロード→2019全国学テ要請 県教委

・中学校 の「英語調査」に関する学習資料
    ダウンロード→英語調査 学習資料

・新聞社への資料提供
   ダウンロード→新聞社
 
・文部科学省への意見書
   ダウンロード→2019 文科省HP用
 

【愛教労学習資料】子どもの自死を繰り返させないために

愛教労は繰り返される子どもたちの自死問題に向き合うための学習資料①②を発表しました。
全文は以下よりダウンロードできます


子どもの自死を繰り返させないために・その1   ~「福井県の教育行政の根本的見直しを求める意見書」から学ぶ~
ダウンロードはこちら → 「福井県の教育行政の根本的見直しを求める意見書」から学ぶ

子どもの自死を繰り返させないために・その2    ~「青森市いじめ防止対策審議会報告」から学ぶ~
ダウンロードはこちら → 「青森市いじめ防止対策審議会報告」から学ぶ
 

2018年 全国学習学力状況調査に反対する新たな取り組み

赤字部分が2/6更新部分です
緑字部分が3/4更新部分です


文部科学省初等中等教育局参事官付学力調査室への

 全国学力・学習状況調査に関する意見書 → 2018.文科省.pdf 

 

愛知県教育委員会への

 全国学力・学習状況調査に関する要請書 → 2018全国学テ要請 県教委6・6.pdf


県内市町教育委員会への
 全国学力・学習状況調査に関する要請書 → 2018全国学テ要請 県内市町村教委.pdf


県教委内学力向上推進委員会への

 全国学力・学習状況調査と学力問題に関する意見書  その1 → 2018 学力意見書 Ⅰ .pdf

 全国学力・学習状況調査と学力問題に関する意見書(NEW)  その2 → 2018 学力意見書 Ⅱ .pdf 



愛教労【学習資料】
全国学力テスト
 来年度から
「知識」「活用」を一体化した問題へ → 知識・活用の一体化Ⅱ.pdf
 英語予備調査で問題点続出 →  英語予備調査で問題点続出改訂版.pdf


 全国学力テストで学校教育をゆがませないように 
→ 全国学力テストで学校教育をゆがませないように.pdf
 学校作りアンケートに寄せられた教職員の意見 → 学校づくりアンケートに寄せられた教職員の意見.pdf
 やはり学力テストは中止しかない → やはり全国学力テストは中止しかない.pdf