夏の学習会
学校・教員評価の問題点と
学校づくりの方向について語る
8月20日、愛教労は、労働会館にて「夏の学習会」を開きました。
記念講演では、東京大学の勝野正章さんが「学校評価・教員評価と学校づくり」という題で、新しい評価導入の背景や他府県での問題点と運動の可能性について話されました。講演の一部を紹介します。
「新しい教員評価」の問題点は?
評価導入によって教育活動への悪影響が80%!
評価が導入されている地区(宮城高教組・東京高教組・大阪教育委員会施行のまとめ)のアンケート結果では、評価が学校の活性化や資質向上・教育活動への影響にマイナスの影響があると80%近い教員が答えていました。理由は、「教育活動を5段階で評価するのは無理。多様な職務を行っている教職員を少数の管理職で評価するのは不可能。管理職の恣意的評価につながる。」などで憂慮される実態がありました。
給与等に安易に結びつけた成果主義では意欲低下!
成果主義賃金を導入した富士通やイギリスの公務労働者の調査結果では、労働意欲が逆に減退したことを指摘されました。原因は、「同僚間にねたみの感情が生じた。むしろ士気が減退した。チームワークに悪影響があった。組織の目標を個人の目標にブレークダウンできない。目標でカバーできない仕事に重要なものがあるので目標管理はうまく機能しないにも関わらず給与等に安易に結びつけたため、労働意欲の低下、チームワークへのマイナスの影響(足の引っ張り合い)、技術力の低下、チャレンジ精神の喪失が生じた。」などがあげられました。
教育現場では、多くの教員が目標達成しても全員に支払われる金銭は総枠があるので、教育委員会は、学校から申告された全ての人の賃金をふやすわけにいきません。校内では、絶対評価で決定しても教育委員会では相対評価に変え、分布率を利用して換算せざるを得ません。従って給与等に安易に結びつけた成果主義では当然、意欲低下がおこります。
複雑・多岐にわたる職務に対する適切な自己目標を欄内に記入することは難しい!
「自己目標の設定についてどう思われましたか?」という問いに対して、宮城県高等学校教職員組合のアンケートでは、「目標設定が難しい」と62%の教員が答えました。理由は、「複雑・多岐にわたる職務に対する適切な自己目標を欄内に記入することは難しい。数値化(遅刻の生徒を何人から何人に減らすなど)を求められたが設定は困難だった。チームで行う教育活動にバラバラな目標を立てて支障をきたす。」などがあげられました。
自己目標は、あくまでも管理職の企画した内容にどう近づけるかという目標であり、従来個々の教員が学校全体の現状や改革を職員会議などで論議していた学校のありかたを根本から覆すものとなります。企業の目標管理の手法である「企画・運営」に携わるもの(管理職)と、「実践」のみを行うもの(一般教員)の分離は、企業経営理念に基づく機械的なマネージメント・サイクルといえます。
不服申し立て制度の不備!
評価基準の曖昧さ(愛知県施行の手引きによると、評価規準は、・大いに発揮されている・概ね発揮されている・あまり発揮されていない。の3点)や評価結果のフィードバックの仕方、不服申し立て制度の不備が指摘されました。
評価結果の本人開示権(自己評価部分のみではなく、評価者による評価も対象に)、教職員代表を含めた第三者機関としての不服申立機関の設置などが検討されなくてはなりません。
開かれた学校作りと「学校自己評価・教員評価」の展望は?
長野県では、「自己目標の作成や自己評価の申告過程で、同僚の意見を聞く中で協同の意識を醸成する。」と評価の作成過程での他者の意見を聞くことを位置づけています。また、生徒・教職員・保護者で三者協議会という組織をつくり校則・施設設備、そして授業改善などについて話しあう中で、住民の学校に対する当事者意識や参加意識が向上しました。
埼玉県教育委員会では、「目標設定に際して学年などの校内で十分話し合った上目標設定したり、目標について相互理解を深めるためにお互い情報交換することが望ましい」と校長と教員一個人の申告でなく多くの教員と対話し、孤立化を防ぐ方向を示しています。「客観的な評価を確保するとともに、学校運営全般にわたる意見交換の場とするため、生徒・保護者・地域の代表者からなる学校評価懇話会(仮称)を設置する。委員構成・人数については、各学校の実態に応じたものとする。」と学校運営の参加者を教育委員会が明文化しています。
これらの方向は、文科省の目指す教師を学校の企画・運営から分離する方向とは反対で、学校を外にも内にも開くことにより本来あるべき学校の姿の可能性を示しています。
学校・教員評価の持つ問題点の指摘と今後の方向性を指し示した講演内容は、今後の愛教労の評価問題の闘いに向けて多くの示唆を与えるものとなりました。
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